魔女の街の”魔女”へ
僕が暮らすこの街から
橋を渡ったこの先の街は、通称”魔女の街”
この橋を渡り、その街へ踏み入れたものは
二度ともどっては来ないと言う。
僕が10歳の時、6歳年上の兄が
『男は度胸だ!』と悪ノリし、橋を渡り、魔女の街へ行ったきり、戻っては来なかった。
母は、三日三晩 泣き続けた。
”魔女の街”の方角は、常に雲に覆われている。
僕は、兄を奪った”魔女”を永遠に憎む。
ある時、僕の街へ『異分子研究家』と名乗る団体が押し寄せた。
目的は『魔女の正体を暴くこと』
そして、その研究家はこうも続けた。
『魔女なんて異分子、この世にあってはならない。この世は、我々、”常人”のみが存在を許されるのだ』と
僕はその言い分に、僕はとても違和感を覚えた。
確かに僕自身、魔女が憎い。
だがしかし『存在を許されない』存在なんて、この世にはない。
許すとか、許可なんかなくたって
この世に存在してはならないものなんて、無い。
誰からの承認も必要ない。
だからこそ、この研究家たちは、ものすごく”怖い”存在だなと思った。
いまだかつて、目にしたことのない”魔女”
恐ろしいし、怖い。
でも、きっと
それが
存在してはならない理由には、ならない。