『どうか、不甲斐ないこの僕に罪を』
『僕』は死神なんだ。
いや、正確には『死者の近親者』の心の中に、無遠慮に、土足で上がり込む奴なんだ。
ご遺体の通報が入ると『僕』はそのご遺体のあるHPまで向かう。
…今回は父を亡くした娘へ、死神として向かう。
ご遺体に、ドナーの意思表示が、
例えば運転免許証とかにあった場合、そのご遺体の健康な臓器を、移植用に引き取らせていただく。
でも、家族としては、十中八九おそらく、
複雑は心境であろう。
罵詈雑言を放たれる場合もあれば、心の整理もできず泣き噦る人に対し質問攻めにすることもある。
…それでも私は、
その臓器提供を受けることで助かる命もあるのも事実。
『生あるものはいずれ死ぬ。
生きているだけで死と戦っているんだから、それとの戦いを自覚して行っているか、いないかの差なんだよ。
…そして、死を否定することは、イコールで 誕生を否定することと同義なんだよ。』
そうだ。そうだよ。僕は人の命を救う、架け橋になっているんだよ。
…そのはずなんだよ。
でもやはり、今日も僕は、人1人を救うために
死者の前へ、死神として舞い降りる。