灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

『 夏休み後が卒業の日 』 -短編作-

 

???

『 「これからの夏休みは有意義なものにするようにー」っててっちゃん先生言うけどさ、よく考えてみたら ”ヨミヨシ”で過ごすのは今年までなんだよなー…』

 

俺は”唯一のクラスメイト” 冬里 巳波 (ふゆさと みなみ)へ言う。

 

この部落 ”ヨミヨシ”は大人たちがよく口にする”過疎地域”と言う場所で 冬が来て、雪が積もると街へつながる道が寸断される。

その前に 俺たち”二人だけの学校”は廃校となると同時に街へ引越しをする。

 

つまりこの夏休みはヨミヨシで過ごす最後の夏だ。

 

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巳波

『瑞貴はさ?』

 

巳波は俺 ”高塚 瑞貴(たかづか みずき)”を見ずに棚田を眺めながら問いかけられる

 

瑞貴

『うん?』

 

巳波

『昔…って言ってもまだ小学校へ入る前によくいってたじゃん?

『こんなど田舎嫌だー!』って… それは今でも変わらないのか?』

 

俺はただ黙って聴いていた

 

巳波

『…やっぱり街へいきたいのか?ここから出て行けて…嬉しいか?…』

 

 

瑞貴

『…正直、よくわからない。でも ヨミヨシへは滅多に帰れなくなること…

…それと新しい街でうまくやっていけるか… 不安だよ』

 

巳波

『…そうだよな。ヨミヨシから出て行くのは俺たちの意思に関係なく…無理やりなんだもんな』

 

瑞貴

『…』

 

巳波

『だからさ、お前 そんな無理して悪ふざけして大人たちを心配させてやるなよ』

 

瑞貴

『…みんな 俺たちのこと すきでいてくれたかな ?…これからもすきでいてほしいよ』

 

俺はそれ以上は目頭が熱くなりすぎて そのまま帽子を深く被り顔を隠した。