灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

ドクダミとシロップ

 

『僕は、この世界は美しいと思うんだ。毎日がキラキラさ!』

 

幼馴染の彼はよくこう口にする。

 

 

彼は天真爛漫、誰とでも仲良くなれて、

いつも人の輪の中心にいて、人気者で。

…とても とても、優しいのだ。

 

 

 

物心ついた時から、彼はいつも一緒にいた。

 

幼稚園、小学校、中学、そして高校に至るまで、ずっと一緒。

 

 

私は、まさに真逆の存在

根暗で、無口、人見知りでうまく喋れなくて…

勉強だって、 良くて 中の下

昼休みも、放課後も

いつも1人で本を読む。

 

 

そんな私にも、彼はよく構う。

ことあるごとに、私を気にかける。

 

 

優しくされなくていいのに…

 

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20歳になった時、初めて2人でお酒を飲んだ。

 

私はどうも、お酒が強いらしい。

美味しいし、いくら飲んでも平気なのだ。

 

 

彼は、全くの下戸

いつの間にか潰れていた。

 

 

そんな彼が、ベロンベロンになりながらこう言ってきた。

 

 

『…俺な、実はお前に謝らなくちゃいけにゃいことがあるリュんだ…

…お前がまだガキだった頃、俺はお前の大事にしていた人形を、壊しちゃったんだ。

その時のお前は、怒りも…泣きもしなかったが、

…なんとゆうか…とても、とても悲しい顔をしてたんだ。

…俺は、その時初めて、人を傷つけることの意味を知った…気がしたんだ。

…だから俺は、以降 みんなが幸せになれるよう、そうゆう人間になれるように努めた。

…ただな、俺は肝心のお前をまだ 救えていない…ような気がするんだ。

…どうなんだろうな?』

 

 

彼のその言葉は意外だった。

 

そもそも、きっかけの話しなんて覚えてなんかいないし

そんな理由だったなんて…

 

 

私はこう答えた

『 『人を許すってことは、忘れるってことだ。』…私は覚えてなんていないし、…つまりはそうゆうこと、

重松清の言葉よ。あなたは、なんにも気にしなくてもいいのよ。』

 

 

そう言いふと見ると、彼は寝ていた。

 

 

今の言葉が聞こえていたか、いないか?

…そもそも覚えているかはわからないが、

気のせいか、その時の彼の寝顔は、心なしか柔らかかった。