師とミーシャ
『何かを得るためには、別の何かを犠牲にしなければならない。
…つまりは対価だ。』
私の師はよくそう言う。
師はこうも言う
『自己犠牲は美徳だ…とは言わない。
ただね、何か劇的に、大逆転を起こすときに、何の躊躇いも無く 自らの身を投げ出すことは、確かに効果的だ。
…君は…私の『ミーシャ』は、その点優れているよ。』
当時の私は、師の言葉に返答が見つからなかった。
その年の冬、師は亡くなった。
後日、師の家族より 私宛の手紙を受け取った。
『私のミーシャ、突然君の前から消えてしまって申し訳なかったね。
正直、君は、私の教え子の中でもなかなか手ごわかったよ。
…器用にこなすようでもあり、本質的に不器用。
君はきっと、今後の旅の中で、理解されないことが多々あると思う。
…でもね、私は君へ最期に、君の師として伝えたいことがある。
君は間違ってなんかいない。
不安や自己嫌悪に陥って、君が自身を嫌いになったとしても
私は君の師として、あの世からもずっと
『私は間違っている』と思っている君を、否定し続けよう。
追伸 今後の君の旅路が、幸せなものでありますように。』
先生 ありがとうございます。
そして、さようなら。