灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

きっと ”あらし”のせい

 

暑い空気が蔓延する季節でも

それでも変わらず、冷え切った瞳で、忌々しげに空を仰ぎ見る。

 

最初の挨拶から、帰りの挨拶まで

彼は視線を合わせてわせてはくれなかった。

 

今日もまた、そんな”冷え切った瞳の彼”が帰ろうとする。

しかし帰れない。

 

数刻前から始まった暴風雨

こんな天気では帰路にはつけない。

 

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???

『…バイバイってさ、僕は嫌いなんだよ。』滅多に口を開かない彼が独り言のように呟く。

 

私は思わず、尋ねてしまった。

『なんでなの…?』と

 

ひどい雨音の中でも彼は私の声が聞き取れたようだ。

 

『 バイバイの…その瞬間のサヨナラが、本当に最期の挨拶になってしまうって、…そしてそれはいつ何時おきてもおかしくはないってことを知ってるから…かな?』

最後に疑問系でこちらへ返した彼の表情は、若干はにかんでいた。

 

私はただ『そうなのか』としか返すことができなかった。

 

そして再び無言

雨もいっこうに止みそうにない。

 

沈黙に耐えかねて今度は私から話しをふった

『…どうして…今までほとんど誰ともかかわろうとしなかった貴方が、そんな話しを私にするの…?』と恐る恐る。

 

彼は一考した後に

『きっとこんな天気だからだよ』と

まるで他人事のように言った後に彼は雨の中へ飛び込みずぶ濡れになりながら走り去った。

尊きふるさと -短編詩-

 

大概の人は失くしてからそれの価値に気づき、後悔をする。

 

喪失することによって 初めて価値を得られるのだ。

 

代償と言うと

なにか嫌な響きになってしまうけれども

お金に 近い一面と感覚でもあるのでは?

 

喪失と言う気持ちと引き合えに

価値の尊さを得られるのだから

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『 夏休み後が卒業の日 』 -短編作-

 

???

『 「これからの夏休みは有意義なものにするようにー」っててっちゃん先生言うけどさ、よく考えてみたら ”ヨミヨシ”で過ごすのは今年までなんだよなー…』

 

俺は”唯一のクラスメイト” 冬里 巳波 (ふゆさと みなみ)へ言う。

 

この部落 ”ヨミヨシ”は大人たちがよく口にする”過疎地域”と言う場所で 冬が来て、雪が積もると街へつながる道が寸断される。

その前に 俺たち”二人だけの学校”は廃校となると同時に街へ引越しをする。

 

つまりこの夏休みはヨミヨシで過ごす最後の夏だ。

 

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巳波

『瑞貴はさ?』

 

巳波は俺 ”高塚 瑞貴(たかづか みずき)”を見ずに棚田を眺めながら問いかけられる

 

瑞貴

『うん?』

 

巳波

『昔…って言ってもまだ小学校へ入る前によくいってたじゃん?

『こんなど田舎嫌だー!』って… それは今でも変わらないのか?』

 

俺はただ黙って聴いていた

 

巳波

『…やっぱり街へいきたいのか?ここから出て行けて…嬉しいか?…』

 

 

瑞貴

『…正直、よくわからない。でも ヨミヨシへは滅多に帰れなくなること…

…それと新しい街でうまくやっていけるか… 不安だよ』

 

巳波

『…そうだよな。ヨミヨシから出て行くのは俺たちの意思に関係なく…無理やりなんだもんな』

 

瑞貴

『…』

 

巳波

『だからさ、お前 そんな無理して悪ふざけして大人たちを心配させてやるなよ』

 

瑞貴

『…みんな 俺たちのこと すきでいてくれたかな ?…これからもすきでいてほしいよ』

 

俺はそれ以上は目頭が熱くなりすぎて そのまま帽子を深く被り顔を隠した。

無題

 

”過去と向き合う”

それをすることによって得られる、または越えられる試練があると言うけれど

 

本当に”それ”は過酷な諸行なのだなと

過去と 己の内面に向き合うと言うことは

正直言って とてもしんどい。

 

 

それでも日々は

私の後ろへ積み重なり 

後悔もまた増えてゆく。

 

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難しいね

 

取り敢えず

とりあえずは自分へ一言

『 今日もまた頑張ったね。偉い。ゆっくりとお休み』