Lost~僕の欠落~ (短編作)
僕はいつも考えていた。
”僕は何の為に生まれ 何を目的に今も生きているのだろう?”かと
僕はいつも気がつくと
学校の屋上の鉄柵の外にいる。
一度 教師に目撃され
大騒ぎになりかけた。
その時の僕は
『いやー!今日は風も気持ちよくて思わず!…おさわがせしましたー』と言って乗り切ったが
今日もまた 気がつくと僕はそこに居た。
僕
『…またやっちゃったな。…このまま飛び降りたとしても、まぁ それはそれで…』
僕は独り言で自分へ言い訳をした。
その時 不意に、後方から声をかけられた。
???
『よー 、相変わらず”悩める少年”かね?…とりあえず、学校の屋上から飛び降り自殺なんて、全国ニュース級の事案は起こさないでね〜…一ノ瀬くん?』
一ノ瀬
『…そうゆう三上先生は、学校の屋上でタバコですか?…タバコは身体に悪いんですよ?』
三上 夏帆 30代後半
この学校の保健室の先生(養護教諭)だ。
この学校のほとんどが知っているが、この先生は若い頃、
巷では有名な元レディース幹部の一人だった。
三上先生
『…”身体に悪い”か?
…今にも自殺しようとしている奴の言葉とは思えないな?』
そう言いながら、三上先生は手慣れたようにセブンスターに火をつけた。
一ノ瀬
『…僕は…”死にたい”のでしょうか?…正直、よくわからないです。』
三上先生はタバコの煙を吐いた後、こう言った。
三上先生
『…あんたは強すぎるんだよ。ただ、その強さは歪だ。
…大概の子たちなら、ポッキリ振り切っちゃって、楽になれるのに、
あんたは強すぎるが故に、それができない。
…一つ 良いことを教えてやろう…』
三上先生
『あんたはまだ子供だ。…法律的、金銭的にも…
…それ故に あんたは”今自分がおかれている状況”を、自分の力だけでは、決して変えることができない…
…ただね?お前やあたしが望もうが、望むまいが、状況は変わっていく。
お前も時が経てば大人になる。
…その頃には色んなものが変わっている。
…そして、お前が今、目の前の選択肢を選び続けた後に、お前の未来…
…若しくは…”お前の生きる意味”がある。
…生きる意味ってものは、与えられるものじゃない。自分で選択し、勝ちとるものだ…
…ただし、どんな形であれ 生存していることが大前提だけどな。』
一ノ瀬
『…僕は…その”意味”を見つけられますかね?』
三上先生
『そんなの当たり前じゃねーか!…まぁとりあえず今は”場つなぎ”でもいいから陳腐な意味でも生きてりゃ良いんだよ!…とりあえず、一服するか?』
一ノ瀬
『僕は未成年です。吸いませんよ。
…先生?本当に貴方はそんなんで教師ですか?…』
三上先生
『冗談よ。…まあ保健室でサボるくらいなら良いわよ。…戦略的撤退ってことでね』
三上先生はハニカミながら、タバコの吸殻をシガレットケースへ押し込んだ。