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灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

Family story

 

『…あなたたちは、自分に名前がない理由を考えたことがありますか?…名前とは、すなわち、”存在”を指す言葉です。

しかし、”名前が無いあなたたちは存在を承認されていない”のです。』

 

 

ここでは

僕たちには、それぞれ数字で呼ばれていた。

 

僕は『24番』

 

この”庭”では、僕たちのような数字で呼ばれる子どもたちが40人ほどいる。

 

…物心ついた頃からここで暮らし、朝 起床後に食事を摂った後、”勉強”の時間が始まる。

 

勉強では、基本 4人1班のチームで、様々なテーマに沿って、別チームと対戦していく。

 

午前の”勉強”が終わると、寝台で横になり、点滴を2時間かけて打つ。

 

点滴後に、もう一度、午前中の”勉強”と同様のテーマと設定で、対戦をする。

 

そうして僕らの1日は終わる。

 

 

夜 僕の班の部屋で最年長の『12番』が話しを始めた。

 

 

12番

『…なあ?…やっぱりこの”庭”って、異常じゃないか?』

 

そう言うと、次に『19番』が応えた。

 

19番

『そうなのか?…何が異常なんだ?』

 

12番

『何って…なあ…、お前たちは、外の情報ってやつを知らないからな…』

 

すると、僕より年下の『29番』が無邪気に反応した

 

29番

『え?!…12番は外のこと知ってるの?!…でも、調べちゃいけないんじゃないの?!…と言うよりも、どうやって知ったのさ?!』

 

12番

『そりゃあ…一応、俺はこの班の役割は【分析官】だからな…それなりの知識と、技術や手立てはあるさ…』

 

 

班の中では、それぞれ役割が存在する。

 

僕の班では、12番が【分析官】 19番が【狙撃・観測手】 29番が【前衛・アサルター】 僕、24番が【アジテーター・ 指揮官】となっている。

 

 

12番は続けた。

『…外部情報へアクセスできる端末があったもんで、見つからないようにここ1ヶ月、色々と調べてみた…

…そうしたらさ、この国では俺たちぐらいの子どもは学校?ってところで…俺たちがやっているようなのじゃなくて…数学?とかそうゆう勉強をしているんだって…

…そして そもそも俺たち子どもが銃火器を使ったりしてやってる”勉強”は異常なんだって…』

 

僕たち3人は、押し黙ってしまった。

 

 

その夜の会話はそこでおしまいになったが、その夜は4人とも眠ることができなかった。

 

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それから一週間が経過し、いつも通りの勉強中、

隣の屋内敷地で爆発音がしたと思ったら、

知らない黒服の、銃火器で武装した大人たちがなだれ込んできた。

 

僕たちはこの場合、”侵入者を排除する”ように教えられてきた…が、僕は咄嗟に躊躇をした。

 

 

その黒服の侵入者たちは、”庭”の大人たちを拘束して、僕たち子どもへは

『君たちを保護しにきた!だから撃つな!』と声を張り上げる。

 

しかし、他の班の子どもたちは”教わった通り”の対応を取り、次第に交戦状態へとなってゆく。

 

ここで僕は、指揮官として班員へ指示を迷った。

 

(僕たちはこのまま…このまま…死ぬのかな…?…それは…そんなのは嫌だ…!)

 

 

24番

『29番 武装を解除!…敵意がないことを示せ!それから19番と合流、別働を!

12番 侵入者が何者かを探って僕と合流後、可能なら交渉へうつる!

19番!29番と合流後、 観測手としてこの敷地内が俯瞰できる位置で状況の確認、報告を! 』

 

19番

『…いいのか?…教わった通りやらなくて?』

 

24番

『…ああ、巻き込んじゃって申し訳ないけど、これが【アジテーター】である僕の最善策だと判断した。』

 

12番

『従うよ…。我らが指揮官殿!』

ふっと笑いながら12番がそう言った。

 

29番

『ちぇ!…つまんないけど仕方ないか…』

 

 

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僕は12番と一緒に黒服の大人たちと対峙した。

 

 

黒服の大人たちが声を張り上げてこう言った。

 

『君たちへ危害を加えることは一切しないっ!…だから、戦闘を停止してくれっ!

…これ以上、我々に君たちを殺させないでくれっ!』

 

そう先頭で声を出す黒服の大人たちの後ろ側の複数名が、憔悴仕切った表情の人たちもいることが視認できた。

 

12番

『…声色に”嘘の音”は混じってない。…あの大人たちが言っていることは本心だよ。』

 

そう言うと同時に、19番と29番から無線が入る。

 

19番

『聞こえるか?…敷地内、全方向から囲まれてるぞ!

…あと、他の班の負傷した奴が、その黒服の大人たちの【メディック】から、処置をうけてるぞ!』

 

 

僕は、深く呼吸をした後に

決心した。

 

 

24番

『我が班は、これから要求通り投降する。以上。』

 

 

…それからは色々な大人たちが僕たちのもとへ来た。

なかには記者と呼ばれるジャーナリスト数名から取材をされることもあった。

 

その記事を読むと、僕たちの顔などが載っていないものの、情報誌の見出しには

 

『驚愕!先進国で今尚 行われていた 非人道的人体実験!』

『子どもへの洗脳教育と殺戮マシーンへの育成』

『国家グルみでの、軍事教育か?』などだった。

 

 

…そうこうしているうちに1年が過ぎた。

 

 

 

僕たちは今、”児童養護施設”と呼ばれる施設で

僕たち4人も含めた10名で生活をしている。

 

 

僕はぼーっと、梅の木に咲いている花を眺めていると、不意に声をかけられた。

 

 

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???

『よっ!…相変わらず、普段はぼーっとしてるのな、

24番…じゃ、ないな…そうだろ?19番…じゃ、なくて… 葵!』

後方からやって来た元『29番』へ、元『19番』が声をかける。

 

杉崎 葵

『そうだねー、19番…じゃなくて堺も相変わらずじゃないかー』

 

そこへさらに話しへ加わる者がいた。

元『12番』

 

杉崎 仁

『…そうだな。今の俺たちは名前と居場所をもらった。

…それに、園長先生も言っていたじゃないか。俺たちは決して不幸なんかじゃない…』

仁がそう言いながらニヤッと笑った。

 

 

 

この施設へ来る前まで、

僕たち4人は、それぞれ、自暴自棄気味になっていた。

僕自身も『疲れた…正直、このまま生きていても仕方がないし…』と考えていた。

 

 

そして、この施設へうつると、園長と名乗ったおばあさんはこう言った。

 

 

園長

『周りの大人たちはあなたたちがとても可哀想な子たちと見ているようですが、私はそうは思いません。

確かに、あなたたちが”庭”と呼んでいるところで、大人たちがあなたたちへしたことは、決して許されるものではありません。

けれども唯一、良いと思えるところがあります。

それは、各々が他者の欠点を補いながらも、自身の才能を最大に活かすことができるように、複数名で生活をさせていたところです。

”人は独りでは生きていけない”…これは事実です。

…だからこそ、他者と持ちつ持たれつ生きていく、共生が必須なのです。

そのことを本当の意味で理解することができているあなたたちは、他の一般家庭で育ってきた子たちよりも、ずっと強く、そして賢いです。だから、一緒に、これからも生きてゆきましょう。

…そしてなにより、私達は…』

 

 

仁がはにかみながらこう続けた。

『園長先生も言っていたじゃないか…なあ?…杉崎 晶 』

 

僕は『24番』と言う数字から杉崎 晶という名前をもらった。

 

『ああ、そうだな。

…”私達は家族なのだから、これからも一緒に生きていきましょう”ってな。』

 

そう言うと、ふと4人で吹き出し笑った。

その声で、梅の木に止まっていた鳥が飛び立った。

 

 

~fin~

 

イラストはhttp://www.pixiv.net/member.php?id=11993920様のフリーアイコン作品です。