後輩騎士とナイトパークで
夜の11時過ぎ、ぼちぼち”父”が帰ってくる。
…もともと、喧嘩ばかりしていた両親。
ここ最近は、互いに顔を合わせれば、昼夜を問わず些細なことで怒鳴り合う。
私も、来年の春には大学へ進学して、一人暮らしをする予定。
学費は自分で工面できるよう、学費免除の特待生として、既に合格している。
大学は首都圏にある『 夜見学園大学 理工学部』へ入学する。
佐久間 結(ゆい)17歳
私の目標は
『父親のような金でものを言わせる様な人』にも
『母親のように、”そんな夫”に不満を持ちながらも、何もできない人』には絶対にならないことだ。
当面の目標は
『大学入学までに、この家に居ることに耐えること』
結
『…今夜もいくかな…』
私はここ最近、”あの人達”の喧騒に耐えられなくなってきた。
ので、一戸建ての2階にある自室の窓から、そっと、屋根伝いに外へ出る。
そして、音楽プレイヤーで音楽を聴きながらとにかく歩く。
ただ、繁華街付近へは行けない。
怖いとかではなく、やはり補導されてしまうと、色々と面倒だ。
季節は冬
寒いので自販機で温かい缶コーヒーを買って、今日も無人の児童公園で飲む。
そのままぼーっとしていると、不意にケータイが鳴った。
メールだ。
from 黒田 圭一
『先輩。もしかして、こんな夜中に児童公園にいたりしませんか?』
結
『…はて?どこかに圭一くんがいるのかな?』
私はとりあえず、生徒会執行部の一つ下の後輩
黒田圭一へメールを返信する。
結
『圭一くん、こんばんは。よくわかったわね?君はエスパーか?』
メールを送信すると2分後、児童公園の入り口に圭一くんが走りながら入ってくる様子が見えた。
圭一
『はぁっ …はぁ…、先輩… なんでこんな夜中に1人で…はぁ、…こんなとこにいるんですか?!』
結
『…何故って?…ただの散歩だよ。圭一くんこそ、こんな夜中に出歩いてはダメだろう?』
圭一
『俺の家、この公園の目の前なんですよ。窓から人影が見えて、もしかしてと思ったら…』
結
『…そうなのか?知らなかったよ。』
圭一
『…先輩?ここ数日、ずっと夜中にこの公園に来てたでしょう?』
結
『…なるほど、見られてたか。…まあ、ただの気まぐれだ。』
圭一
『結先輩…』
彼は外見内面、ともに優男
いわゆる 草食系男子だが、今の圭一くんの険しい表情は、今まで一度も見たことがなかった。
圭一
『先輩…結センパイはもっと自覚を持ってください!
先輩、女の子なんですから! …”それ”で今までだって、危ない目にあったじゃないですか!!』
結
『…ああ、そういえば馬鹿な男達に”襲われかけた”こともあったわね。大丈ぶ…』
『それなら!』
言葉を遮られた。
圭一
『…それならっ!こんな危ないこと、二度としないでください!
…先輩、今でも”その時のことを思い出したり、こうやって平然と口に出したりしますけど、
その時の先輩は必ず、指や唇が震えてるんですよっ!
…俺、結センパイのこと、本当に…しっ…心配っ…でっ…!』
結
『…すまないね。そうだな。確かに”こわかった”
…二度とこんなことしないよ。』
圭一
『ありがとうございます』
圭一くんは涙を腕で拭いながら応えた。
結
『…そこでだ、圭一くん。君にお願いがある。君の部屋に泊めてはくれまいか?』
圭一
『…結センパイ?俺の話しを聞いてました…?』
結
『…ああ、つまりは君が守ってくれたり、若しくは”慰めてくれる”んだろう?』
圭一
『なんでっ!そうなるんですかー?!センパイー!!』
fin