灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

蒼い魔術師は悪夢を屠る 20


作戦立案や『杭』の打ち込み作業、隊の編成等は、
予定より30パーセントほど早く、順調に進んでいる…


ナタリーは、仮眠のために、本部 宿舎のベットで横になっていた。
すると不意に、異様の気配を感じた。


身体を起きあげると、目の前に5体
風の精霊『シルフ』がいた。


ナタリー
『…(シルフ?…誰かが召喚したの…?)って?なんで私の部屋に!?』

シルフ達は一様に、申し訳なさそうな表情をしたかと思えば、風の紐で私の動きを封じてきた。


ナタリー
『ふぐぐっ…ぐふっ!(しまった!内通者でもいたか!?)』


身動きを封じられると、自室の扉が豪快に開き、そこから3人が入り込んできた…

3人は、それこそ、馴染みの顔だった。


ナタリー
『…(クラレス師団長に、ラック先生、そしてドックマン?まさか、この3人が内通者?)』


アレックス
『…蒼の、まさかと思うが、俺たちを内通者だと思ってはいまいな?』

ルーグ
『…この状況では、それを疑われても無理ないかの…』

アレックス
『まあ良い、緑のじいさん、ちゃんとこの狂戦士をちゃんと縛っておけよ!』

やっぱり、このシルフ達、並の力じゃないと思ったら、ラック先生が召喚したようだ。


アレックス
『…『赤』の称号のもと、名を示し、縛り、契りを交わす。この理導を通し、ここに結べ!…』

ナタリー
『ふぐぐっ!ぐっ!』
猿轡状態で喋れない…
このままでは、『縛りの魔術』をかけられてしまう!でも何故?!


アレックス
『…汝、自らの意思で、自らの命断つこと、ここに禁ず!』

ナタリー
『…!?』


私に『縛りの魔術』をかけた上で、ようやく私は解放された…


ナタリー
『…状況の説明を願います』
(無論、弁明の余地はない!)


ルーグ
『…終焉のトランペッターを完全に掌握する方法は『身投げ』…とわしは考えておる。』

私はどきりとした。


ルーグ
『…つまりは、
術者が『自身を消滅させることを前提』に行えば、その他の被害は無い…というところまではわかった。
…どうかね?蒼の魔術師どの?』

ナタリー
『…さあ、どうなんでしょうね?』

ハンダー
『…お前は本当に分かりやすいのな。
マインド・オープンをかけなくても、お前の考えてることは分かる。てゆうか、わかりやすすぎる。』

ルーグ
『…しかし、お前は、赤の奴に縛りをかけられてしまった。
…でも、今後一切、関係の無い縛りのはずじゃ、…どうかね?』

ナタリー
『…』

ハンダー
『…お前は今こう考えているだろ?
『問題無いわけ無いじゃない!だって、予定では、私が終焉のトランペッターを、『私自身が消滅することを前提で成立』するように、計算してたんだからっ!』
…こんなところだろ?』

ナタリー
『…黙秘します。』

アレックス
『…はっ、この死に急ぎ野郎が!
死んで、英雄にでもなる予定だったんだろうけど、…そんな美味しい役、持っていかせるかっての!』

ルーグ
『…わしは君の名付け親だ。…親より先に死のうとは、とんでもない親不孝者じゃ…』

ハンダー
『…なんでっ!…なんでいつもそうやって背負いこむ。
遺される者の気持ちは、お前がよくわかっているだろう?…それなのに、…ナタ…お前は…っ!…』


ドックマンはそこまで言って泣き始めてしまった。

…何故だろう?気がつくと私も涙が出ていた…
…これはもらい泣きなんだ。私は悲しくなんて無い…。

でも、間違っているかもだけれど、なんだか暖かい気持ちだ。

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