灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

蒼い魔術師は悪夢を屠る 14


『学内悪夢』から半月経った頃、本部より、緊急の『特務会議』への召集が掛かった。

私は、ラック先生と共に本部へと向かった。


今回の特務会議召集の名目は『Sランク級 議題について』とあった。

おそらく、クラレス師団長がトーキ分室長に内偵調査を行わせた結果、
今回の召集へ至ったのであろう。


私の直属の上司でもあり、特務会議室の分室長を務めるトーキ・ハインドは
元は、諜報員
情報収集又は、情報戦といった類のものを得意とする。


更に言うならば、『ハインド家』とは、
史上 最初にパラドクスと接触を果たした魔導士の末裔の1つのであり、
ハインド家のみならず、その魔導士の血を分かつ者達は、社会的な地位もさることながら、
それぞれ特定の分野に特化した才に恵まれている者がほとんどである。


…史上で初めてパラドクスとの接触に成功した魔導士…


正確に言うと、『魔術師』とは異なる存在であるとされている…


我々魔術師は、事象や空間、そして己の精神を組み合わせ、
編みあげることで術を発動させる、一種の科学だ。


しかし、魔導士と呼ばれる者は、
『魔術のような類のもの』は使用できるが、それは魔術ではないとされている。

何故なら、ハインド家も含め、血を分けた家系それぞれ全て、
一切の魔術的干渉を受け付けない血統であるため、魔術は扱えないはずだ。


…その部分については、未だ、謎とされている。


とにかく、今回はトーキ分室長の調査結果によって、今後が左右される。


ルーグ
『…ナタリー君、君の上司、ハインド家の者は君から見てどのような存在かね?』

ラック先生が何気ない感じで尋ねてきた。

ナタリー
『…上司としては、とてもサボリ魔な上司でした…書類仕事や、軍の運営計画書まで、私に丸投げするよな…』

言いながら思わず苦笑いをしてしまう。

ナタリー
『…しかし、一軍人、特に情報を扱うことに関しては、
どういったからくりかは不明ですが、
素早く、確実な情報を得てくる方です。
…シュバルツの悪夢の件が、本部に遅くなりながらも届いたのはトーキ分室長のおかげですし。』

ルーグ
『…ふーむ…、となるとやはり、今回の召集、ただごとではないの…ナタリー君、覚悟はできているかね?』

ナタリー
『はい。どんな結果であってもです。
最悪のケースを念頭に置いたプランは用意してありますし。』

ルーグ
『ふむ…ではさっそく特務会議に臨むとしよう』


私達2人は、本部の正門を潜り、特務会議室のある本館を目指した。


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