灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

愚者と女帝と刑死者と 44


喫茶 からめるでは、クリスマス限定の、ブッシュドノエルを販売する。

オーナーがツテを使い、外部から、
この日のためだけに、パティシエを他店より借りるらしいのだ…


ケーキを取り扱う店にとって、この時期は特に人手が必要なはずなのに、そんな状況の中でも
プロを借りることのできる
オーナーの人脈やツテ、手腕には
本当に驚かされる。


ケーキは、文字通り、飛ぶように売れた。




閉店後、オーナーがスタッフ全員を集めた。


オーナー
『今日は忙しい中、お疲れ様ね!…そしてこれは、私からのクリスマスプレゼントよー』


店頭で販売していたブッシュドノエルだった。


僕の箱には
3人分用のサイズのものが入っていた。

オーナー
『少年君は、大切な仲間と一緒に味わえたまえー!』



LINEで、2人の予定を聞いてみる。
…まあ、おそらくは、既に先約があるだろうけど…


刑死者
『今夜、ヒマ? もしヒマだったらで良いんだけど
オーナーからでかいケーキもらったんだ。一緒に食べないか?』


10分後、ほぼ同時に返信がきた

愚者
『ケーキ!食う!よこせっ!』

刑死者
『…』

女帝
『ブッシュドノエルとはまた良いわね。遅くなると思うけど、お邪魔させてもらうわ。』

愚者
『私も、まだ電車の中だよー。早くケーキ食いたい〜!ちゃんととっておけよな!』



夜の10時半頃、女帝、愚者の順番でやってきた。


…そういえば去年は、クリスマスって感じなこと、出来る感じじゃなかったな…


ケーキの甘さのためか、
この一時も、なんだか甘く優しい時間だった。

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