愚者と女帝と刑死者と 42
『あの出来事』から1週間
僕は、熱を出して寝込んだ。
高校もバイトも休ませてもらった。
赤髪と銀髪からは、
『ノートとっといてやるから安心して休んでおけー』とメールが入った。
7日目、そろそろ動けるだろうと思い、立ち上がろうとすると、まだ軽いめまいがし、転んでしまった。
その瞬間に『来てやったぞー!』と言う大声とともに
愚者と女帝が、僕の部屋へ入ってくる。
愚者
『…って、何 すっ転げてるの?!相変わらずねー!』
刑死者
『…ふん、相変わらずさ…』
女帝が無言で手を貸してくれて、再びベッドへと入る。
刑死者
『…悪い…』
女帝が真剣な面持ちで、愚者はもどかしい表情のまま、それぞれこちらを無言のまま、見つめてくる。
刑死者
『…えーっと、なに?』
女帝は意を決したように言う。
女帝
『あんたの、1週間前の『出来事』と、それにまつわること、からめるのオーナーさんから全部で聞いたわ…』
刑死者
『…そっか、…お前らも、薄々気づいてはいたんじゃないか…?』
愚者と女帝はそれぞれ、目配せした後に
首を縦に振った。
刑死者
『…僕もね、なんとなく、他の奴らとは違うんだなって思ってはいたんだけどさ、敢えて、その部分を見ようとはしなかったし、何より、認めたくなかったんだと思うんだよね。』
愚者と女帝はまだ無言だ。
刑死者
『…そのー、なんだ?僕って変じゃん?自覚はあったんだけどさ、やっぱり、その…お前らから見ても変だよな?』
愚者
『…あのな、なにを『変』とか『普通』とかって、その基準はなんなんだ?『見えない物差し』で、それを計って、判断しているのなら、それは違うぞ。
それを言うなら芸術家やその卵は全て『変人』だ!』
女帝
『趣味嗜好は人それぞれ、言うならば、マジョリティかマイノリティかで分かれるだけのことよ、それは。
貴方はたまたま、マイノリティなだけ。
それに、私たち3人の関係に、その事に関しては、なんの関係の無い、無関係なもの。
今まで通りの3人組よ。』
僕はなぜか涙が出てきた。
…おそらくこれは、『安心して出てくる類の涙』だろう。
…明日、高校へ行ったら、赤髪と銀髪にも、このことを伝えよう。
…きっと、大丈夫だ。