灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

蒼い魔術師は悪夢を屠る 9

第7章
 
 
ナタリーこと私が、古巣でもあるアカデミーへと講師として着任し、1ヶ月が過ぎた。
  
この頃になると、学生たちとも気軽に話しをできるようになっていた。
 

そこで、
普段から私によく話しを聞きに来てくれる
Bクラスの学生に、ドックマンの愛称『シバイヌ』について(前回の仕返し半分の気持ちで)
話しをした。
 
 
ナタリー
『…あなた達、ドックマン先生の、学生時代のエピソードに興味ない?』
 
学生達は目をキラキラさせながら
『聞きたいです!!』と言った。
 
  
…学生にせがまれたのなら、仕方ない。
私は『先生』として、この問いに答える義務があるのだ。
 

 
ハンダー・M・ドックマンの学生時代のあだ名は『シバイヌ』だ。
 
その命名のエピソードはこうだ。
 

 


ドックマンはとにかく、惚れっぽい性格で、特に『年上のお姉さん』タイプの年上学生や、講師にまでアプローチをし、その度に玉砕していた。

そして私達が学生時代の途中から
当時新任の(とても美人で若い)女性講師が赴任した。
  
ドックマンは、その先生に一目惚れをし、
ことあるごとに
アプローチ、又はプロポーズまがいのことをしていたのであった。
まさに首ったけであった。
 
  
そんなドックマンの姿を
当時、私をはじめ、同期のみんながみんな、
生暖かい目で見守っていた。
 
 
…その理由は、
端からどう見ても
ドックマンはその女性講師に相手にされておらず、『大人のお姉さん』的対応で、
毎回、ドックマンをあしらっていたのだ。
 
 
 
それから3ヶ月後の昼休み
校内の中庭にいたその女性講師を、ドックマンはとても大声で呼び止め
いつものようにアプローチをしていた。
 
 
その時点で、校内にいた者や、そして私達も含め、
とても多いギャラリーがいる中で、
その女性講師はこういったのだ。
  
 
女性講師
『貴方…ドックマンってつくぐらいだけれども、まさに忠犬って感じね…
アキタイヌ…だと、呼びづらいから…そうね、貴方は『シバイヌ』って呼んであげる』
 
 
シバイヌ…じゃなくて、ドックマンは、ショックを受けていた。

しかし、端から見ていた私達は、
その出来事に、笑いを堪えるのに必死であった。
 
が、どうしても堪えられないと、大笑いをしだした人がいた。
 
教頭であるラック先生だ。
 
  
ラック先生が大笑いしたのを皮切りに
堪えていた者達、全員が吹き出した。
 
私は、涙が出るくらいに笑った。
 

 
ひとしきり、話し終えると
話しを聞いていた学生も笑っていた。
 
 
 
その後に、ドックマンは
自分の受け持つBクラスの学生からもシバイヌと呼ばれるようになった。
 
  
 

ハンダー
『なんでだよね〜…なんで話したんだよ〜…俺の黒歴史だぞ、それー…』
若干涙目のドックマンが、
後に酒の席の度に、必ずボヤくようになった。
  

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