灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

愚者と女帝と刑死者と 40


臨時バイトは飲み屋


僕は、酔っ払いが嫌いだ。



案の定、うざったく絡んでくるおじさん達もたくさんいたが、
『一週間だけだし、お金のためだし』
と割り切って、仕事をしていた。






しかし、それよりも耐え難いことがあった。

一緒にバイトにはいっている、
正確には、
飲み屋の方に直接雇われている21歳の女
見た目も中身も正真正銘のギャルだ。





こう言った類の人は
直接 害が無ければ、自分は問題ない。




ただ、今回は実害つきだった。













そのギャルは、何故か僕に懐いてきた。

ことあるごとに連絡先を聞いてきたり
仕事終わりにご飯に誘われた。







僕は断り続けていた。










今日でちょうど、1週間 
その店でのバイトは最後の日だ。

そのギャルにまたご飯へ誘われた。

『最後なんだからさー、送別会ってことで!』としつこくせがむ。




…僕も、これで最後だからと
その食事に行ってしまった。










そのギャルは、店につくなり
アルコール度数の高い酒を飲みまくり、最後にはべろべろになっていた。

その間 何度も僕にも酒を勧めてきたが
『未成年なんで!違法なんで!』と断り続けた。
ギャルは『もー!おかたいなーw』と言う。





ギャルは既に泥酔状態。







仕方なく、僕は肩を貸し、
徒歩数分という、ギャルのアパートへと送って行った。



アパートへ送り届け
それではと去ろうとすると
そのギャルは、急に僕を部屋の中へ引きずり込んだ。






そのまま部屋の中へ連れて行かれる。

不意を突かれたためか、抵抗が弱くなってしまい、抗えない。












そのままギャルが僕の上へ馬乗りになる。




『ねえ〜、この状況 わかってるんでしょー。あなた、一目見たときから『美味しそう』って思ってたの。
…さぁてと…』

ギャルはシャツのボタンを開け始めた。


















僕はここでやっと我に返った。


我に返った瞬間、
恐怖 そして…とてつもない嫌悪感で頭の中が充満した。



僕は悲鳴を上げながら
その女を払いのけ、
文字通り、逃げるようにその部屋を出た。

…逃げるようにではない。逃げたのだ。









全力疾走でその場を離れる。

走った。走った。走った。走った。








走りに走り、気がつくと
ある程度、駅に近い繁華街へ出たことにようやく気づく。





息も切れていた。


足を止め、呼吸を整えた後に、再び駅を目指した。



時刻を確認する
PM11時



終電には間に合う。









…歩きながら先ほどの出来事を、
記憶から抹消しようとするも
逆に増幅されていく…








ふと…喫茶 からめるの前を通ると、
灯りがついているのに気づく。




閉店しているが、
灯りがついているということは、
おそらくオーナーがいるのであろう。







僕はほとんど無意識に
からめるへ入っていった。







店へ入ると オーナーが、
ホールでノートPCを使い、作業をしていた。






オーナーは、入ってきた僕の顔を見るなり
驚いた表情をしたと思うと、
次には席を立ち
僕をカウンター席へと無言で誘導し
コーヒーを淹れてくれた。





暖かいコーヒーを飲んで
自分の身体が冷え切っていたことに気づいた。

そして、ポロポロと涙が出た…









オーナー
『何があったのかい?少年よ。もし良かったら、お姉さんが聞くよ』




刑死者
『…怖かった…嫌だった…とても、とても気持ち悪かった……』

ここまで言って、涙が止まらなくなってしまい
喋ることができなくなってしまった。


…どうしよう…涙が止まらない。