灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

愚者と女帝と刑死者と 30

『で?あんたはやっぱり断った訳と… 
ホントもったいないわねー。

あの子、結構な優良物件よ?』
これは女帝の言葉だ。




僕は
『まあね〜、可愛い後輩では
あるんだけどね〜…
でもそもそもねー…』
と返す。











時期は3月下旬


高校入学前に、
色々と買い出しに回っている最中であった。












4月になり、ついに高校生になった。


と言っても、僕の入学した通信制高校は、
制服も自由。

入学式の参加自体も自由という、
本当にフリーダムなところであった。





この高校は通信制であると同時に
単位制でもあるため
カリキュラムもかなり自由に組めた。




僕は1年目から取れるだけ
科目を取った。






高校の担当教師からは心配されたが、

逆を言えば、
最初の1年で、取れるだけ単位を履修しておけば


2年生 3年生は、余裕を持って、
勉強とバイトに集中できる
と考えたためである。





さて次は、バイト探しだ。





高校は毎日通わなくて良いとはいえ
最低 週1での登校が原則


高校自体の道のりは
自宅から最寄り駅まで 自転車で15分
自宅の最寄駅から電車で40分 
駅から徒歩で15分


その道のりの間に、
バイト先があると望ましい。


でも、なかなか条件に合うようなものが無い。


なるべくなら、
時給が良いところを選びたいところだが
そうなると『高校生不可』が多い。







コンビニでのバイトが無難かなと
考えていた時、ふと、

新聞に載っている求人広告が目にとまった。





それは、とある喫茶店でのバイトの募集だった。




時給も、立地も、まさに望み通り。



これだと、早速応募の電話をして

3日後に面接のアポを取った。





正直、働くこと自体が
初めてなので
採用面接の時点で、とても緊張していた。




面接時間5分前に、その店へ入店。





コーヒーの香りが充満する店



いらっしゃいませと
長身のガッチリしたイケメンウェーターがやってきた。


僕はそこで、
面接に来たものですと、声を震わせながら伝えた。





バイトは ほぼ即採用となった。

この店は、
オーナーも含めた 総勢4人に
僕が新しく 加入することで5人の職場となった。






…1週間、見習いとして勤務して

この喫茶店『からめる』が
ちょっと変わった喫茶店であることに、
ようやく気づいた。






1.オーナーは、
見た目から 女性だと思っていた…が
戸籍上は男性だということ
(俗に言われている、オネェらしい)

そして年齢は、30代半ば

東京にある有名大学の経済学部を卒業し、
この店を経営する傍ら

複数の商社から、
経営コンサルタントを依頼されている程の凄腕らしい。









2.初めてこの店に来た時に
僕を対応してくれた、
長身イケメンさん。


男性であるが、
恋愛対象も男性…
本人曰く
『つまりはゲイってこと!』
らしい。

年齢は20代後半

このイケメンさんが
僕の指導係をしてくれた。









3.長身でロングヘアーの女性
本人は
『あ、私はノーマルで、
既に彼氏持ちだから笑』
とのこと。

彼女は、国公立大学 大学院で、
電子工学を学んでいる。

いわゆる『理系女子』
なのだそうだ。







4.主に厨房で調理担当の40代の主婦
2児の母らしい

さっぱりとした性格で
10歳年下の旦那さんのことを
溺愛し、ことあるごとに
のろけ話をする。













…と、いったように
個性豊かな従業員が
揃いも揃っていた。



…僕も例外ではないのかな…?!










…勤務を始めて1ヶ月程 経つ。

この店で働くことも
この人達と働くことも

両方とも楽しかった。