灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

愚者と女帝と刑死者と 25

『普通の10代の男子なら
この程度の力で引っ叩かれても倒れはしない』

でもその男子は倒れた。








愚者と女帝は、
まるで自分が引っ叩かれたみたいに
目をぱちくりとさせていた。


そんな2人を余所目に
僕はスマホを出し、電話を掛けた。



相手は、母親の兄 
つまりは叔父さんだ。



3コール目で叔父が電話に出る。
僕は叔父にこう伝えた。


『もしもし、叔父さん?ごめんね急に、
あのさ、同級生がどうも酒飲んで、倒れちゃったみたいなんだ。
救急車?これから呼ぶよ。

え?普通なら救急車が先だろ?
そうだったね。

気が動転して、冷静じゃなかったよ(棒読)。

救急車はこれから呼ぶけど、
青少年課への連絡は悪いけど、お願いしてもいい?

ありがとう 叔父さん。
それじゃあね』
プツ。







そう言って僕は電話を切り
叔父の忠告通り、119番に電話した。





救急車はすぐに来た。

救急隊員は、バイタル等を取ると
『アル中だな…まったく、この時期は
特に多くて困る…』と言い、
男子生徒を搬送する。








この一連の僕の行動を見て、
女帝が説明を求めてきた。





そりゃそうか…
要はこうだ。





まず
突っかかってきた男子生徒

様子を見ていて、
酒で悪酔いしている状態であると推測できた。



未成年の飲酒は、もちろん違法だ。



そこで僕は
(我ながら、意地が悪いと思いながらも)
国家権力の力に頼った。






先ほどの電話の相手 
僕の叔父は 
中堅の警察官なのだ。




 警察沙汰になれば
その生徒は、
それなりの処遇を受ける。


そこまで計算して僕は実行した。







そうゆうことだ。


一通り 話し合えると
愚者が言った。

『あんた やっぱり恐ろしいわ!
普通、それだけで、そこまで考えないし、
そもそも、あの男子にそこまでする必要あったの?』









僕はこう答えた
『違法は違法。悪いことは悪いだ。』


そして
笑いながらこうも続けた
『まあ 個人的な恨みもあったからね…無慈悲なのは認めるよ』


愚者はその
『個人的な恨み』がなんなのかを
聞こうとしたようだが

女帝がそれを制した。





女帝はその言葉を聞いて
意味ありげに無言で
ニヤニヤしながらこちらを見てきた。