灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

愚者と女帝と刑死者と 19

事件から数日後



葬儀やらなんやらで、
僕は数日間、学校を休んだ。





…涙は出なかった。





そもそも父とはあまり、
関係は良好ではなかったが

それでも、
家族のために働いてくれていた父には感謝していた。







涙は出ないが、
心のなかは、
次第にぐちゃぐちゃになっていった。






 母は落ち込みながらも
息子の僕達の前では気丈に振る舞った。



そんな僕に、
再び 現実的問題を突きつけられた。





受験を検討していた進学校は、
偏差値は足りている。



しかし、私立ということで、経済的に困難だ。



そもそも、高校進学自体、
家計には負担だ。







僕はどうすればいいんだろうか…





その頃から
なんとなく、学校へ行く気が失せていった。



朝 登校するも、
途中で足が止まってしまう。

どうでもいいや
と思い、

そのまま近くの児童公園で時間を潰す。
図書館へ行く。
河川敷へ行く。
そして夕方になって、家に帰る。



それが1週間続いた。




2週目になり、なんとなく
電車に乗って
県の県庁所在地の街まで来て
街中をふらふらとしていた。






気がつくと、夜になっていた。


案の定、補導されてしまった。






家に帰ると、母は泣きながら僕を怒った。
そして、
自室から出ることを禁止されてしまった。










そこで初めて、
スマホの電源が
オフになっていたままだったことに気づく。

2週間くらいオフままだったのだ。




電源を入れて、画面を見ると…
LINEの通知が100件を超えていた。







様々な人からだ。

吹部 一同から
ホルンの2年生の後輩からも

兄から

野球部の連中からも

クラスメイトでも、特に仲の良い奴から

そして、愚者と女帝からも…






僕はこんなにも様々な人に
心配をかけてしまった。

やっぱり僕は
自己中心的な人間だ。






翌日から、学校にもちゃんと通い始めた。

心配の連絡をくれた人達には、
直接 謝罪した。
みんな優しく、許してくれた。
その上で、僕の身を心配してくれた。





そして、愚者と女帝を放課後 僕の家へ誘った。