灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

愚者と女帝と刑死者と 16

帰りのバスの中、
始めは姦しくも、騒がしくもあったが、


後半になっていくと、
緊張の糸がほどけたように
ほぼ全員が、眠りについてしまった。




僕のスマホが震えた。
LINEだ


相手は、愚者と女帝
つまりこの3人の対話ページだ。
(グループLINEではない)





愚者
『やったよ〜!あたし達やったよ〜! 
でもみんな寝ちゃったから話できない!
どうせ起きてるでしょー!』
それに加え スタンプを3連投



彼女は元気だな…



既読はつけたが、
僕も疲れていて、返事をするのが億劫だ。



そうこうしているうちに
女帝からのメッセージ




女帝
『今回は、夢への足掛けの第一歩目。
今後も引き締めていくよ。』
そのメッセージに続いて、
女帝のイメージに合わない、ファンシーなスタンプが続いた。






…僕も返信を書き込み始めた。






正直、伝えたいことは色々とあった。

吹部に誘ってくれてありがとうや

君たちが主に頑張ってくれたおかげだや

その他諸々もだ。





けど、キリがない。

考えた末にこれだけ書いた。

刑死者
『2人とも、本当にありがとう』



LINEの既読は2人ともすぐについた。
返事を待って、スマホをにらめっこしていると…



予想外な行動を愚者が…
いや、愚者と女帝の2人がとった!





 愚者が、運転中のバスの中で立ち上がると
僕に向かってこう叫んだ


『バカーー!!! あんたも頑張ったじゃない! 色々と言いたいこともあった上で、
伝えきれないから、
これっぽっちの返事なんだろうけど、
言わなくても伝えられると思ったら
大間違いだ!ふざけんなよ!』






 これに続いて
女帝も立ち上がり、
こちらを向いて
静かに、しかし よく通る声でこう言った。

『愚者がほぼ全て、言ってくれたけど、本当にその通りよ。
少しはその癖、直したほうが、良いわ。
あなたはただでさえ、誤解されやすいんだから…』







バスの中では、
さっきまで寝ていた部員や顧問までもが
何事か?!
と、呆然としている。




僕自身も、とても驚いている。

愚者のみならず、女帝もこんな大胆なことをするとは…



他の部員が、訳が分からないという表情をしているうちに
バスは中学校へと到着した。