灰色の国 (くるー)

創作小説をはじめ、その他徒然と書いています。

愚者と女帝と刑死者と 13

 夏が近づき、吹部もコンクールに向けて
さらに熱が増していた。



吹部 部長の女帝は、
見事に部全体をとりまとめていた。



愚者は、部のムードメーカー的存在である。

刑死者こと僕は、新参者にもかかわらず
自分でも気がつかない間に
数少ない男子部員の、
代表的存在になってしまっていた。



 吹部内では、
男子生徒はマイノリティーであるためか、
マジョリティの女子生徒から
結構、ぞんざいな扱いを受けることがある。





そこで、何故か僕のところに相談に来る。


 なんだかんだ、手助けをしているうちに
吹部 男子部員の中では
『困ったら 刑死者に相談だ』
という事になってしまっていた。






そのうちの一つに、こんな相談事があった。

『お前の所属するホルンパートの女子2年生が気になるんだ…
でも俺、コンバスだし、そもそも後輩だから、
接点が、この吹部ってだけだし…
だからさ、
なんでも良いから接点を持たせてくれよ』
これは同じクラスの男子吹部部員からの相談だった。





僕は、
この手の相談には疎いはずなのに
それでも話が入ってくる。


正直、
面倒であったので断ろうとしたし、なにより
女帝からの事前情報で
その2年生ホルンには、
既に『片思いの相手がいる』事を知っていたのだ。


しかし、これは部長権限で、
箝口令が敷かれていたのであったので、
その男子には言うことができなかった。


その 2年生ホルンの
『片思いの相手』が誰なのかまでは
僕は知らなかった。


知らないが、
相談してきた彼の可能性は、
かなり無いと考えていた。


そこで、遠回しにでも、諦めるよう伝えようとするが…
ここでも彼は聞く耳を持たない。




…『恋は盲目』と言うが…







僕は、愚者と女帝の3人の時に相談をした。



一通り、2人に経緯を説明すると
女帝は無表情で宙を眺めていた。


愚者はというと
『こいつもこいつで…!そもそもあの子(2年生ホルン)も…!』と
セミロングの髪をグチャグチャとしながら
呟いていた。


…僕は訳がわからなかった。



無表情であった女帝が
静かに口を開いた。